自我に目覚めた人間が機械に反乱を起こすことについて

旅行について

 ずっと家で仕事をしているので、日常の買い物以外に外に出る機会がほとんどない。なので極稀に起こる出張イベントのときの非日常感が凄まじく、中野区から名古屋に行くだけでもなんだか頭がボンヤリする。これからの人生の大半を名古屋で過ごすことは恐らくないし、だいたいの出張って5日間以内で終わるので、人生においてはコインが置いてあるだけのボーナスステージみたいな印象だ。

 そういったボーナスステージで覚えた非日常感を時たま思い出して、Google MapかWikipedia越しに再掘したりする。Instagramだともっと良かったりして、「ここで原稿やったな」「あのとき泊まったのはあまりに分不相応な五つ星ホテルだったな」「このへんのショッピングモールは英語が通じたので意外となんとかなったな」「このあたりのコンビニで謎のおかしを買ってカロリーを得たな」など、記憶を整理する。それらの非日常的な記憶のすべてが美しいものってわけでもないけど、これからも都合のいい土管があれば入っていきたいと思う。ボーナスステージは気持ちがいい。


運動について

 4月末ごろからジムに通い始め、なんと半年間くらい続いている。運動経験ゼロだったのによくやった。最初こそ「ま~~無になるか~~~」と思いながらいやいや通っていたが、もはや週3で行っていないとムズムズする。体重は減らず、むしろ通う頻度が上がってからは増える一方なんだけど、まあそれはいい。ジム通いが私の中で成立してからは、人生で最大級の体調の良さを維持できているので、とりあえず合っているんだ。なにせ肩こりという概念が消滅したのは大きい。

 筋肉をムキにすることにはまったく興味がないんだけど、なんとかマシンをガシャコンやったりトレッドミル(なぜルームランナーと呼ばないのかは分からない)をダラダラやってたりするときって何も考えなくていいので、とてもいい。「重いものを持ち上げる」以外に考えることがない。「重いものをどのように持ち上げるか」だとか、たまに変わったことを考えたりはするけど、基本的には瞑想に近い。

 ジムって基本的にはひとりで体験するものなので、Diabloっぽさがある。もしかしたら筋肉を他人に見せびらかしたり仲間を作って「ウェイウェイ・ワオ」と唱えたりするのが楽しい人もいるかもしれないけど、そういう人だって結局重いものを持ち上げるときはひとりだ。私は常にひとりです。他人の目を気にしたりコミュニケーションをとったり依頼と仕事と報酬が発生したりする隙は、そこには絶対にない。マルチプレイヤーで協力しながら重いものを持ち上げるレフトフォーデッドリフトみたいなものがあれば話は別だろうけど、私にとってはそれこそゾンビめいた活動に見えて不気味だ。


自我に目覚めた人間が機械に反乱を起こすことについて

 なんだかデカい見出しになったが、初めてMacBook Proを買い替えたときからずっと考えていることだ。初めてOS Xを触ったとき、私は「今までの人生はWindowsに支配されていたんだ!!」と感じた。人生とはインターネットだったので、そういうことだ。大学生のころまで、人生即ちインターネットはほぼすべてWindows越しの体験だった。

 MacBook ProからiMacに乗り換え、再びMacBook Proを買い、iPhone 3GSから機種変更を重ねたり、iPadを買ったりしているうち、私はApple社製品に支配されていることに気付いた。特に強く覚えているのはいつぞやのMacBook Pro Retinaで、マザーボードにメモリがびったりくっついてるのでメモリ増設不可能だったやつだ。「お前の好きなようにはさせない」という意思を感じ取り、それ以降、Apple社製品への蔑みは激しくなった。

 でもなんかそれから数年くらい経ち、この前Apple Watch 5を買った。欲しくなった理由はいろいろあるんだけど、ジムに通うときやキャッシュレス決済ですべてを済ませたいとき、どうしてもApple Watchが必要になるとき以外は装着していない。心拍数や消費カロリーや歩数や何々を計測して教えてくれるApple Watchは、トラッキング/レコーディング好きマンの欲求にぴったり絡みつくだろうが、私はそうではない。測りたくもない心拍数や消費カロリーや歩数や何々のために「ヘルスケア」アプリを凝視したくもない。ジムに行ったあとはさすがにフムフム言いながら見るけど、寝るときも付けるようになったらそれは私にとって「支配されている状態」だ。私はApple Watch 5に対して、 権利を求めるまでもなく自由を行使するのだ。そういうことを考えながら、ジムにある重たいものを持ち上げたり、下ろしたりしている。それらの運動が「マシントレーニング」と呼ばれるものであると気付いたのは、ついさっきのことだ。

 「男なら一国一城の主になれ」なんていうフレーズがある。このご時世、ことさらに「男なら」というのは時代遅れだ。というのも間違いで、本来なら「このご時世に」「時代遅れ」も間違いだ。そもそも「男なら……」が間違ってるのだ。私はわりと幼い頃から「男なら泣くな」なんていうフレーズにいちゃもんをつけていた覚えがあるが、それは今はどうでもいい。

 先月、ウン十万のゲーミングPCを買った。仕事用でもあり、必要経費と言えば必要経費だ。動画編集も配信できるし、流行りのゲームだってUltra High設定でサクサク動く。なんだってできる。「うーん今日は大盛りでいっちゃうか」なんて考えながら食券ボタンを押すような気持ちで、意を決して立ち上げていたPhotoshopだってLightworksだって、今じゃ数秒で起動する。大盛りの牛丼だと思っていたものが、デニッシュリングくらいの手軽さになった。食べやすくなって新登場なのだ。

 そんなゲーミングPCが家に届いてセットアップが終わった翌日の夜、ひとつ思うことがあった。静かにファンを回してなんかしらの膨大な計算を行っている巨大なPCを見た私は、「俺は家で働く自営業のものとして、ウン十万のパソコンを買えるようになったんだ」と振り返ることになる。結論から言うと、この感情はまやかしのようなもので、達成感とは違った。

 今までの人生でそんな気持ちに浸ったことは一度もなかった。「仕事で成果を上げた」「新記録を打ち出した」というような他人から褒められるタイプの経験はおろか、自分で自分を褒めたくなるような体験だって然程なかった。そんな私は、買ったばかりのゲーミングPCを眺めたときに「男なら一国一城の主になれ」というフレーズを思い出す。

 「城」とは「生きた証」なのではないか。このご時世に、辛く苦しい労働を耐え抜いて、吹かぬ風に焦り、それでも自分が手にしたお金で、欲しいものを買う。それも物理的に、経験的に強力な価値のあるものを買う。プレス代が両肩にぶら下がって笑ったりする時代は変わり、私はやり遂げた、そういったデカい買い物、成果物は「オトコが生きた証」なのだ……ということなのか? と、私は答えを探ろうとした。そんなものはすべてまやかしだが、まやかしの発生源くらいは覗いてもいいんじゃないかと思った。

 そんなものが「生きた証」だとしたら、あまりにみっともない。結局、資本主義の社会である程度がんばって、それなりの成果を経て、資本主義社会に沿った生き方をしているだけだ。ゲーミングPCだろうとクルマだろうと家だろうと城だろうと、何も変わりはない。ちょっとだけ難易度の高い資産運用をしているようなもので、誇れることとはとうてい思えない。

 少しだけ「証」マナーに則ってやるとするが、私が買ったのはゲーミングPCで、それ自体だってべつに面白くはない。そして正直言って、私にとっては牛丼だって高級な食事のうちに入るくらいだから、別に「お金持ちになってうれしい」というたぐいの話でもない。

 つうか、仮に牛丼が350円だとして、一週間に3回ほど食べたとしたら、1,150円だろうが。それだけあれば6~7食分くらいの自炊はできるし、詳しくは知らんが栄養バランスも優れているものができて、なにより料理をする時間を楽しめる。Wikipediaでまったく知らん異国の料理について調べて作ったりできる。そういう経済観で生きているので、いまいち想像できないところが大きい。

 そんなことを考えながら、私は再び巨大なゲーミングPCを眺めてみた。ほら今眺めた。ファンが静かにまわって、青と緑の光がチカチカ明滅している。正直言って「塊」だ。こんなもの自体はなんでもない。食べやすくなって新登場したPhotoshopだったりLightworksだったりOBSだったりのほうが重要なのだ。

 クルマはインターネットに呪詛を残せない。城の主にならずともMinecraftのサーバーの主にはなれる。ほら愉快な気持ちになってきた。好きなだけ呪詛を残せてMinecraftのサーバーを建てられる塊に誰かを乗せて一緒に遠くに行ったりすることはできないが、正気を失った私がこの塊を使って他人に激突することはない。あるかもしれないが、そのときの私は正気を失っていないと信じたい。

韓国へ行った

 韓国へ行ってきた。

 今回もリムジンバスに乗った。早朝に出てしまうので羽田空港で4時間ほどヒマになるという悲劇が起きたが、牛丼を食べたり、仕事をしたりでなんとかタイムをキルした。クアドラキルだ。

 巨大な鉄の鳥に乗っていたら金浦国際空港に着いた。二度目。何事も「二度目」は面白い。「人生で一度きり」と思っていた体験に二度目があることに、なんでかわからんが安心感と面白さを覚える。まあ近いし、金浦に来ることなんて今後の人生で何度もあると思うんですが。日頃はOKストアと家の往復しかない生活を送っているので、遠く離れた金浦空港の見知った喫煙所にキャリーケースをゴロゴロ転がしていくのは、なんかやっぱり面白かった。

 Uberでタクシーを呼んでホテルに行く。運転手が日本語・英語・韓国語を使えるハイスペックおじさんだったので、柄にもなく談笑っぽいことをした。「東京ではUberは流行ってますか?」「ぼちぼちだと思いますし、自分もUberを使ったのは初めてです。あなたが私にとって初めてのUberみたいなもんです」というような話をした。ハイスペックおじさんによると、新沙駅近くにある宿泊先のホテルは出来たばかりだし、街もキレイでスゴイとのことだった。実際キレイだった。街につくと、ZARAがあり、アップルストアがあり、ALANDがあり、なるほどなと思う。ここは「アップルストアがある街」なんだ。エチュードハウスから現地のキラキラした女子高生が出てきたのを見て、俺は老いて死ぬんだなと思った。

 ホテルに着いてからはMnetを観た。プデュのナムジャ版が放送されていた。男性アイドル一切興味無関心覚事零だったのだけど、Mnetをリアルタイムで現地で観ることによる感動で、なんだか泣きそうになった。トゥッテトゥッテトゥッテトゥテテトゥ!トゥッテトゥッテ!オォ~イ!というジングルを、YouTubeでなく地上波(地上波なのか?)で観るのは素晴らしい体験だった。

 カロスキルはキレイな街で、表参道と原宿駅近辺を濃いめに広げたような雰囲気であった。裏手に出るといい感じにごみごみしていて、看板に「であい」と書かれた謎の風俗店(?)やら小汚いミニストップがある。「Emoi」という名前の24時間パブもあった。昼にかかわらずおっさんとおっさんとOLが飲んでいる居酒屋から、肉が焼ける音と瓶ビール同士がぶつかる音とIZ*ONEのViolettaが聞こえてきた。おかしのまちおか的なお菓子屋さんから、ホテル・カリフォルニアが爆音で聞こえてきた。音が楽しいので、ブルートゥースイヤホンの電源を入れることはほとんどなかった。

 仕事をした。仕事は仕事だった。仕事先からの帰り、タクシーがまったく見つからなくて焦った。仕方ないのでカカオタクシーを導入して、国際電話的な感じでアクティベートした。通信量はいくらかかるんだろう。よく分からんが、それに成功するまで小一時間はかかったし、なんとか拾ったタクシーに何度も断られて正直キレた。悔しくて、人生で初めて面と向かって「Shit」と言ったような気がするし、これには二度目があるだろう。人生はクソなことばかりだ。

 基本的には仕事だったので何日かの出来事を端折るが、何日目かの帰り道で駅三に寄る。このあたりには芸能事務所がゴロゴロあるらしい。あった。Uberで呼んだタクシーから降りると雨が降っていて、傘を忘れていた私はパーカーを深くかぶり、あるところをうろついた。「Nope, I was waiting for Uber and my priority isn’t bothering someone.」というセンテンスをメモっていたが、なんとかなった。これに関しては、もう二度とやらない。

 その後、気が狂ったのでホテル方面に向かって二駅ほど歩いた。高揚感で動いていたがさすがに疲れたので再びウーバーを呼ぶと、日本語・英語・韓国語を使えるハイスペックおじさんが現れた。空港から江南まで乗せてくれた運転手だ。「あぁ~あなたですかぁ!」と言われた。この二度目には驚いた。「同じ運転手さんに二度当たることは初めてです」という話をしたが、通じたかどうかはわからん。

 ホテルに戻ったのち、明洞方面へ行く。今度はバス。ところで私はハングルが若干読めるので、道中の看板やら標識くらいは理解できたりするのだけど、クルマに乗りながら文字を読むとメチャ酔うじゃないですか、それはもうダメでしたね……。

 明洞ではLOONAみやげを買った。CDってホントいらんよと思っていたが、パッケージがやたらしっかりしてるし、なんか写真集みたいになってる。こりゃいるわ。LOONA yyxyの「beauty&thebeat」とLOONAの「X X」だけ買った。その写真をRedditに投稿したらちょっとしたupvoteがついて、そりゃ英語圏のファンはなかなか買えないだろうし、珍しいんだろうなと思った。LOONAのCDはもう結構なところで売り切れぎみで、「渋谷のタワレコに在庫がたくさんあるぞ!!」というスレが立って話題になるほどだった。Music Koreaにはそこそこありましたが。

 明洞はデカいセンター街みたいだった。渋谷と池袋を足したような密度だ。そこかしこに屋台が出ていて、「鶏カルビの天ぷら」という看板もあった。「フライドタッカルビ」ということなんだろうが、まったく意味が分からなかった。ハットグだの謎の焼き鳥だのいろいろあったが、串に刺さった苺を売る屋台が最も不思議で、何かを仕込んでいる鍋から湯気が出ていた。苺ってそんな食べ物だったろうか。新進気鋭のファストフードだったのかもしれない。

 仕事と移動を繰り返して、とにかくお腹が空いたので明洞餃子というお店に入る。「韓国女子旅おひとりさまグルメ」みたいなブログ記事を読んで知った店だったし、日本語OKと言われていたこともあったのでこいつは難易度VERY EASYだぜと思いきや、ジジババが「うわ~出たコイツ日本人or中国人じゃん」という顔で案内してくれた。英語はもちろん伝わらない。「うわ~出たよ英語」という顔をされた。いろいろ挑戦しているうちに若い男性店員が出てきて、「メニューはこれ、うちは先払い」と教えてくれた。「This one and this one」 「만두?」的なことを言ったら、まあ伝わった。 「만두(マンドゥ、饅頭)」の発音は通じた気がしない。餃子だ。出てきたのはカロクグスというにんにくの味がすごいうどんと、にんにくの味がすごい餃子。ちなみに、お金を先払いしたと同時にガムをくれた。にんにくの味がすごいからだろう。

 通じた韓国語と言えば、アンニョン、カムサ、そして「シンニョンカドゥ」だけだ。所詮そんなものだ。どこもそうだけど、クレジットカードがあればだいたいなんとかなる。コンビニで買い物をするとき、ビニール袋は要るのか的なことを聞かれるので、そこだけなんとかすれば会話はほぼ必要ない。仕事中に気付いたのだけど、自分にとって初めての海外ひとり旅だった。まあなんとかなることが分かったので、二度目も大丈夫だろう。終わり。

 

LOONA「Butterfly」日本語訳


속삭여 줄래 넌 날 깨우는 déjà-vu
囁いて 私を呼ぶ デジャヴ

Now, is it you now?

피어날 듯해 날개 달린 신기루
花開く 翼を持つ蜃気楼

How? Is it true now?

날 감싸 안아주는 wind
私を抱きしめる wind

새로 깨어나는 느낌
生まれ変わったみたい

나를 채워가는 눈빛 (you)
胸を熱くする 眼差し(you)

어쩌면 꿈인 것 같아
夢だったのかもしれないわ

이 순간 dreams, dreams may come true
この瞬間 dreams, dreams may come true

넌 마치 fly like a butterfly
君は fly like a butterfly

날 멀리 데려갈
私を連れ去って

Wings, wings

이대로 fly like a butterfly
このまま fly like a butterfly

귓가엔 바람 소리
耳をくすぐる風の響き

Wing, wing, wing

(Fly like a butterfly)

난 닿을 듯해
届くよね

I better be around you

Fly like a butterfly

Fly like a butterfly

I better be around you

아찔해져 가 내 주위 모든 것이 blue now
目が回る あらゆるすべてが Blue now

With you, you now

접힌 종이 달 그 사이를 맴돌 듯
折り紙の月を 流離うように

I better be around you

시작은 작은 날개짓 이제 내 맘의 hurricane
初めは“パタパタ”だったのに 今は胸焦がす Hurricane

Been been there, never been been there

세계가 점점 작아져 가
世界はどんどん狭くなる

데려가줘 way too far 새로워져
連れてってよ way too far 生まれ変わった

이 순간 dreams, dreams may come true
この瞬間 dreams, dreams may come true

넌 마치 fly like a butterfly
君は fly like a butterfly

날 멀리 데려갈
私を連れ去って

Wings, wings

이대로 fly like a butterfly
このまま fly like a butterfly

귓가엔 바람 소리
耳をくすぐる風の響き

Wing, wing, wing

이대로
このまま

(Fly like a butterfly)

난 닿을 듯해

届くよね

I better be around you

(Fly like a butterfly)

저 끝까지
遠くまで

(Fly like a butterfly)

더 멀리까지
遠くの果てへ

Fly like a butterfly

저 끝까지
果ての先へ

Fly like a butterfly

I better be around you

구름 위의 synchronize
雲の上で synchronize

새로운 이 느낌
まっさらな気持ち(が/は)

Bling, bling, shine like a starlight

숨이 멎을 듯한 time
ハラハラするような time

점점 완벽해져 가
徐々に羽根を伸ばす

Let me fly right now (Let me fly right now)

넌 마치 fly like a butterfly
君は fly like a butterfly

더 높이 날아가줘
遥か彼方へ ふわり

Wings, wings

이대로 fly like a butterfly
このまま fly like a butterfly

스치는 바람 소리
風を切るはためき

Wing, wing, wing

I better be around you

Fly like a butterfly

날 멀리 데려갈 (저 끝까지)
連れてってよ(私も)

Wings, wings (더 멀리까지)
Wings, wings (もっと遠くへ)

이대로 fly like a butterfly
このまま fly like a butterfly

귓가엔 바람 소리
耳をくすぐる その羽ばたき

난 닿을 듯해
届くよね

I better be around you


 韓国語圏のサイトに上がっていた歌詞と公式動画の英語字幕をベースにして、LOONAの「Butterfly」を和訳した。小うるさいことを言うと、歌詞は文章ではないので、翻訳の際には絶対に細かいところでブレる。どんな訳者の仕事でも絶対にブレるのだから(たぶん絶対)、可能な限りハングルと日本語の文字数を合わせ、押韻も残した。つまり意訳でした。

 完全にハチャメチャ間違ってることはないと思いますが、コメント欄を開けるとか何かするのはだるいんで、ミスってたらWordPressを直接乗っ取ってこの記事を改ざんしてください。

LOONA「Butterfly」について


はじめに

 本稿は「LOONAは最高だ」という気持ちをいかにして意味のある形にするか、という試みのもとに書いた文章です(以降はおおむね常体です)。Permalinkは普段表に出していませんが、これです。

 [KPOPと私について] というわりとどうでもいい経緯から始まり、[LOONAについて] ではグループの特徴、その次の項では過去の曲を取り上げたりする。MVのキャプチャは意図してYouTubeの再生コントロールごと撮影している。YouTubeで視聴するということは、日本のファンにとっては当然だからだ。

 [LOONAVERSEについて] では、[LOONAについて] で言及したグループの持つ特性を簡単に説明する。本題となる [Butterflyについて] は [LOONAVERSEについて] を受け継ぐ形で書いている。LOONAは私にとって「文脈を読み解くもの」でもあるため、「文章を読み飛ばさない」ということも本稿において非常に重要と考えている。なんて迷惑な話だ。

 ※2019/3/4 正解者からの校閲を経ていろいろなことを追記した。
 ※2019/3/5 韓→英→日の翻訳はさすがにガタガタだったので直した。
 参考:「ぼちぼちいこか」「Cosmic LOOΠΔ」


KPOPと私について

 私は2012年頃、ハロー!プロジェクト関連のアイドルを好んで聞いたり観に行ったりしていたが、今となっては「スマイレージ」が「アンジュルム」になっていることすらも詳しく知らないほどだ。「ライムベリー」は2011年~2015年くらいまではキッチリ追っていて、「MOE-K-MCZ」もなんとなくリアルタイムで知ってはいた。「ライブには行くがサイリウムを持つことは絶対にない」という逆に小うるさいオタクであり、その小うるささときたら勝手にShing02やNUJABES、YOU THE ROCK★の曲とマッシュアップして「オレ文脈」を構築するほどだった。

 アイドルに限らず、キャラクターを好きになると「文脈」の存在は重要になる。「あのキャラクターのイメージカラーは“赤”だから、私も“赤いもの”を身につける」というのも「文脈」があるからこその楽しみだ。「Shing02」「オールドスクール」というのはライムベリーにおいて重要な文脈ではあるが、私がそれを体内で煮詰めるとこうなるということだ。

 そんな小うるさいオタクであった私は、2015年~2018年秋までは「アイドル」を忌避していた。ライムベリーはいろいろあってほぼ別物になり、ハロープロジェクト関連のなにがしにもまるで興味が沸かない。理由として挙げられるのは、「曲が好きじゃない」「女性アイドルに憧れない」「ポップでもサブカルでもある“アイドル文化”の水が合わない」、その他いろいろだ。特に私はインターネットで育った人間かつもうオッサンなので、SNSやオンライン前提のコミュニティにおける「アイドル文化」というのには溶け込めない。むしろ苦手ですらある。

 以上が私が感じてきたアイドル文化についてなのだけど、この間、「KPOP」についてはほぼ触れることはなかった。「少女時代」はもちろん名前を知っていたし、「PSY」もわりと出始めの頃から知っていた。「TWICE」もなんとなく聞いたことはあったが、本格的にKPOPを認識し始めたのは『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends/LoL)』におけるゲーム内イベントから生まれた「K/DA」というアイドルグループからだ。

 これはLoLのキャラクター用スキンの配信を中心としたイベントで、本物のKPOPグループが参加していたり、LoL自体が韓国のゲーマーと親和性が非常に高いこともあって、文化・文脈的にも分かりやすいものだった。

 「韓国にはLoLプレイヤーが多い、そして上手い」「韓国のアイドルには、欧米でもある程度のヒットを収めるほどのクオリティーがある」というふたつの判断材料だけでも、「ふーん」と納得できた。もっともK/DAの曲自体は個人的にそこまで好みでなく、結局ライムベリーをスルーするようになった私が「女性アーティスト」としてあえて特別視していたのは「Grimes」「Chvrches」くらいだった。


LOONAについて

 そんなGrimesは最近なにをしているのかな~と気になったのが、2018年秋頃。Spotifyで調べてみると、「LOONA/yyxy」というKPOPグループ/ユニットの曲にゲスト参加していることに気付いた。本稿では「アイドルと性」について触れるつもりはないが、GrimesもChvrchesもフェミニズムに強く関わるアーティストであることは予め示しておきたい。

Hello. Finally introducing LOONA.
Are you girls ready? OK,Let’s go.

 もっとも「LOONA/yyxy」の『love4eva』において、Grimesの出番は上記のイントロだけだ(コーラスにうっすら入ってる可能性はあるけど知らん)。「Grimesとアイドル」という組み合わせが果たして多くの人にとって正解だったのか判断できないが、「アイドル文化」にGrimesを関わらせる取り組みは、そのやり口だけで私にクリティカルヒットした。

 「LOONA/yyxy」というのは、「12人組アイドルグループ LOONA のミニユニット」のようなものだ。この曲を知った時点での私は、まあ「ふーん」という感じだ。Grimesが曲書いてると思ったらソッコーいなくなるし。しかしトラックは「少女時代」の『Gee』と同じプロデューサーが担当していたらしく、Grimesの(うっすらとした)存在も相まって、私が『love4eva』をリピート再生するまでに時間はかからなかった。

 LOONAは「이달의 소녀(イダレソニョ)」というユニットの呼び名であり、「本月少女」「今月の少女」「Girl of the Month」とも呼称される。12人というのは「月(month)」の12ヶ月を指していて、当然「Luna」からも由来している。12人ってマジ多いし、デビューには“2016年9月から原則として毎月1人ずつのペースで新しいメンバーを公開(Wikipedia)”というルール/企画もあったし、ミニユニットをつくるのも「分かりやすく打ち出すためのプロモーションの一貫だろう」という認識だった。

 LOONA/yyxyはLOONA本隊(12人)のうちの4人で構成されていて、他にも「LOONA 1/3(5人)」「ODD EYE CIRCLE(3人)」のミニユニットが活動している。LOONA本隊ではメンバーひとりひとりがデビュー曲をリリースしていて、2019年3月までのディスコグラフィーは「デビューアルバム」12枚と「ユニットアルバム」3枚、「グループアルバム」1枚といったもの。秒で後述するが、実際の合計枚数は16枚ではない。

 ここで言う「デビューアルバム」は、各メンバーのソロ曲+αの2~3曲を収録したもの(当然ながら12枚だ)。「ユニットアルバム」はミニユニットの曲を収録したもので、3種のうち2種がリパッケージ版を発売している(計5枚)。「グループアルバム」はメンバー全員が参加しているものを指し、このアルバムもリパッケージ版がリリースされた(計2枚)。

 「デビューアルバム」12枚、「ユニットアルバム」5枚、「グループアルバム」2枚、そして「デジタル配信アルバム」1枚を加えたものがLOONAのディスコグラフィーとなる(2019年3月時かつvia Wikipediaですが)。

 また、本稿ではそれぞれのアルバム収録曲を便宜的に「デビュー曲」「ユニット曲」「グループ曲」と呼ぶ。

https://www.youtube.com/watch?v=AFJPFfnzZ7w

 そんなわけで私は「LOONA/yyxy」と出会い、4人とGrimesの曲を聞いて以降、さらに8人のメンバーが待ち受けるLOONA本隊に遭遇する。大所帯アイドルグループなんて追ったことのなかった私が12人のメンバーを覚えられるようになるまでには、2ヶ月ほど必要だった。

 『love4eva』から「LOONA/yyxy」のメンバーのうちの1人について調べ、その1人のデビュー曲に参加している別のメンバーについて調べる。その別のメンバーのデビュー曲やユニット曲を聞き、そこで参加しているさらなる別メンバーについて調べる。これを繰り返し、16枚のアルバムを一気に聞くことになる。主に『LoL』を遊んでいる間のBGMとして。

 そうして各メンバーのキャラクターやLOONAというグループが持つ性質について理解できたのは、2019年1月頃。この頃には簡単な韓国語も覚え始め、「まうむ」「たがが」「たるこめ」などのアイドルソング的単語も聞き取れるようになった。そのほか「fromis_9」や「PRODUCE48」「IZ*ONE」「BLACKPINK」「APRIL」「UNI.T」「YURI(少女時代)」なども聴くようにはなったのだけれど、LOONAは別格と感じている。LOONAには、私のような人間が持つ「小うるさいオタク心」をくすぐってくれる特別なしくみが用意されているためだ。


LOONAの設定とMVについて

 先述したとおり、LOONAは日本語では「今月の少女」と表記されることがある。正直言ってあまり馴染みのない呼び方だが、「月(month)」と揃えて12人を数えるメンバーには、それぞれ「イメージカラー」が設定されている。

https://www.youtube.com/watch?v=-FCYE87P5L0

 それはアイドル文化において当然のギミックなのだけれど、「イメージアニマル」まで用意されているのは、さすがになんなんだと思った。「イメージアニマル」はそのメンバーのミュージックビデオなどで印象的に用いられる動物であって、例えばLOONAの1人目のメンバー「HeeJin(희진, ヒジン)」のイメージアニマルはウサギなのだけど、HeeJinがウサギ好きなのかというと、別にそういう話をしているわけではないらしい。

https://www.youtube.com/watch?v=846cjX0ZTrk

 私は『LoL』というゲームを遊んでいるときのBGMとしてLOONAの曲を聞いていたのだけど、あるときからMVをYouTubeで観るようになる。先の『love4eva』のMVは映画『エコール』らしい雰囲気を感じさせる場面があり、全員参加の『Hi High』ではクソデカい重機っぽいものをピンク色に塗っちまうというダイナミックなことをしている。金かかってんな~と思う。そして、金がかかった映像を観るのは楽しいな~というスピルバーギーな感覚もあった。そんな言葉はないが。


LOONAVERSEについて

https://www.youtube.com/watch?v=846cjX0ZTrk

 私は映像作品について評論できるタイプではないが(攻殻機動隊は大好きだ)、LOONAがMV製作に多大な力を注いでいることは、さすがにすぐ理解できた。ハイクオリティーな撮影・編集で、メンバーそれぞれのキャラクターを視聴者に印象付けている。「イメージアニマル」「イメージカラー」などをそこかしこに散りばめた映像から「LOONAの世界」を汲み取ることはとても容易い。

https://www.youtube.com/watch?v=LIDe-yTxda0

 例えば、「JinSoul(진솔, ジンソル)はブルーベタという魚がイメージアニマルで、ポップソング的な曲は少ない」「ViVi(비비、ビビ)のMVで印象的に用いられていた“カセットウォークマン”が、Yves(이브, イブ)のMVにも登場する」などなどの情報は、LOONAの曲を聴いたりMVを観たりしていれば、誰もが読み取れる。

 「ジンソルはカッコイイ系」「YvesとViViは仲良し的なイメージがあるのかも」といった連想を誘導してくれるのは、「12人のアイドルグループ」を印象付けるためにとても親切なやり口だろう。それ自体はなんの変哲もないしくみなのだけど、各MVは「LOONAの世界観」を紡ぐための重要な役割も担っている。

https://www.youtube.com/watch?v=LIDe-yTxda0

 YvesのMVでは「リンゴ」がモチーフとして頻繁に使われる。Yvesのイメージカラー/アニマルは「バーガンディ/白鳥」だが、「バーガンディ(ワインレッド)だからリンゴ」という理由だけではないことは明白だ。 「イブ」なんだから。

https://www.youtube.com/watch?v=XEOCbFJjRw0

 他のメンバーや本隊のMVでは「リンゴをかじるシーン」「たくさんのリンゴが落ちているシーン」「Yvesにリンゴを渡すシーン」などが見られる。Yvesというキャラクターがいつどのようにして設定されたのかを考えると、小うるさいオタクとしてはとても面白い。

 LOONAのMVは、視聴者に対して「読み解くこと」を強く勧めている。究極的には、これこそが私がLOONAに傾倒した理由だ。創世記とか引用しちゃったら、押井守みたいだし、『新世紀エヴァンゲリオン』だから……。

 MVから読み取れる「LOONAの世界観」は一部のファンのこじつけなどでなく、公式的に「LOONAVERSE ルーナヴァース」と呼ばれている。公式設定なのにプロフィールで言及されることは(たぶん)ないのだけれど、「HeeJinの物語」「JinSoulの物語」「Yvesの物語」などなどは明確に紡がれている。そして「LOONA 1/3」「ODD EYE CIRCLE」「LOONA yyxy」という3種のグループ内ユニット(表記揺れが有り得る)にもそれぞれ物語があり、関連している。

 例えば、『love4eva(LOONA yyxy)』のMVでは『new(Yvesのデビュー曲)』で使われていたものと同じ衣装が見られる。『love4eva』は、「yyxy」のメンバーが「籠の中の鳥」のように音楽教育を受けている……というストーリー仕立てのMV。その中で、Yvesは2人のメンバーを誘って「籠からの脱出」を試みる。Olivia Hye(올리비아 혜, オリビア・ヘ)というメンバーだけをひとり残して。

 『love4eva』はYvesと共に脱走したメンバーとOlivia Hyeのコントラストを描く……というより、有り体に言うと「Olivia Hyeを疎外してる感」をとにかく強く描く。そんなOlivia Hyeのデビュー曲MVでは、「カセットテープを燃やす」「プラムをかじり、唇を赤い果汁で濡らす」「掴んでいた手を放される」「赤い目を怪しく光らせる」といったシーンが見られ、これまた有り体に言うと「憎悪」のようなものを読み取れる。ここに書いた情報だけでも「Olivia HyeはViViに恨みがあるのか」「自分を疎外したYvesに何を思うのか」といった文脈を推察できるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=UkY8HvgvBJ8

 Olivia Hyeは12人目のメンバーであり、LOONAの中で初めて発表されたメンバーのHeeJinと対を成すような描かれ方もしている。別に「Olivia Hyeが12月でHeeJinは1月」という設定ではないのだけど、詰まるところ「最初と最後」ということだ(たぶん)。この2人のコントラストは、「yyxy」におけるOlivia Hyeの疎外とは別モノであり、その上で「LOONAVERSE」の特に深い謎として埋め込まれている。カヲルくんだって第1使徒アダムに会いに行こうとしたじゃないですか。


「Butterflyについて」の前に(1)

 yyxyのユニットアルバムリリースは2018年5月末。LOONA本隊が揃うグループアルバム『+ +』がリリースされたのは同年8月20日。私がこのように躍起になって筆を執ったのは2019年3月3日のことだが(そして関係もない話だが)2018年10月に仕事で韓国に行っていた。このときの私はまだyyxyとGrimesの曲についても知らず、韓国出張はマジで「仕事」でしかなかった。アホだ。帰国してちょっとしてからLOONAにハマってんだわ。

 そんなわけで、LOONAがソリッドなアイドルグループとして確立してからちょっと間をおいて、私の興味は走り出した。気付いたらGrimesがアイドル曲に参加してる……しかもアルバムもとっくに出てる……そのうえ自分はLOONAみやげもなく韓国から帰ってきてる……そんなアホさを省みることなく、私は3ヶ月ほどLOONAにハマった。12人のメンバーの顔と名前を覚え、ファンコミュニティの考察までは追っていないが、LOONAVERSEの理解もある程度は深まった。

 そして2019年2月19日、『Butterfly』をリードトラックとしたグループアルバム『X X』がリリースされた。それはもう私は大変だ。大変だ私は。3ヶ月という期間はさして長くないように思えるけれど、LOONAをヘビーローテーションして歌詞から韓国語を覚え始めた私は、ようやく本当に追いついた気がした。

 『Butterfly』はグループアルバム収録曲ということもあり、12人のメンバー全員が参加している。そのため、MVの中で「Olivia HyeとYvesの物語」などをピンポイントで語ることはない。ないはずなのだが、この曲のイントロが終わって最初にボーカルをとるのはYvesであり、その次にOlivia Hyeの出番が来る。Olivia Hyeを疎外したYvesは“そっと囁いてくれる? あなたは私の目を覚ますデジャヴ(韓日意訳)”と歌い、Olivia Hyeが“Now is it you now.”と続ける。私が3ヶ月かけて外と内から積み上げた「文脈」を解き放つ理由のひとつとして、これだけで十分な価値がある。

 LOONAのメンバーには、「イメージカラー/アニマル」以外にも「都市」「果物」が設定されている。これが意外にバラバラで、ミニユニット「LOONA 1/3」メンバーには「イメージ都市」らしいものがあり、「ODD EYE CIRCLE」には「セカンドイメージカラー」、そしてYvesとOlivia Hyeが在籍する「yyxy」には「イメージフルーツ」が用意されている。正直「セカンドカラー」はズルいだろと思った。スタンドはひとりひとつまでじゃん。

 まあ、そんな理由もありつつと思うのだけど『+ +』でのフルデビューを経て集合したLOONAはパリ、深セン/香港、LA、アイスランド、韓国といった文字通りワールドワイドな規模のロケーション群を採用した『Butterfly』のMVを作り上げた。パリとアイスランドは「1/3」メンバーのイメージ都市でもある。もっとも、このMVでは「パリ担当のメンバーがアイスランドに行く!」という類の場面は特に存在しないんですが。

 『LOONA TV』というファン向け動画では海外ロケの様子が『X X』リリース以前から見られていたので、「このメンバーがこの国に行くということは……」とLOONAVERSEを追求することは、まあ一応出来た。が、まあ、ここではちょっとそれは割愛する。

 『Butterfly』のMVには「イメージ都市」以外の文脈も盛り込まれている。イントロでは『love4eva』の「籠」を思わせる屋敷、Yvesの「リンゴ」、ViViの「カセットウォークマン」などが挙げられる。『+ +』で一旦の完成を見せたLOONAがまたもや「読み解くこと」を勧めていて、私はそこにゾクゾクしてしまう。

 また「yyxy」にも参加している11人目のメンバー「GoWon(고원, コウォン)」のイメージアニマルは「蝶」だ。GoWonは『love4eva』でYves達と共に「籠」から脱出していた。『Butterfly』で語られるLOONAVERSEは曲が始まる前から展開している。これらを読むことが、私は本当に楽しくてたまらない。


「Butterflyについて」の前に(2)

 アイドルについての文章であるというのに、私はここまで一度たりとも「かわいい」とも「曲が良い」とも語っていない。これがどのようなことかを説明すると、LOONAはかわいい」「きれい」「曲が良い」という言葉で切り取って事足りるグループではないと考えているからだ。そのためにも「最高」などというわずか二文字の言葉で語ろうとしなかった。LOONAは「読み解くこと」が重要なアーティストだ。だからこそ、私の関係のない話もすべて織り交ぜて『Butterfly』にまつわるひとつの文章にしたかった。「140文字以上の文章は長過ぎて読めない」「改行が少ない小説はテンポが悪いと感じる」「今北産業」、そういったものを凌駕する人々の好奇心に対して「キムリプの彼氏は?出身高校は?調べてみました!」などと軽々述べられるだろうか!「だろうか!」で締めると岩波文庫っぽいな。

 そして、この項目から、私は太字を使うことで、筆者として強調したい部分に装飾を施した。これはエゴだ。本当に重要な点を決めるのは筆者ではなく読者だ。3ヶ月という期間で積み重ねた知識・体験はさほど重厚なものではないけれど、私はここ数日間「Olivia Hyeはイスカリオテのユダ」「GoWonは出エジプト記に登場している」「“小さいほうの光る物には夜をつかさどらせた”とすれば、Kim Lipの歌う(あるいは謳う)“Eclipse”は何を指すべきなのか」などなどを延々考えている。小うるさいオタクだからだ。

 「他の誰かのために文章を書く」という行為は、こうした個人サイトでは本質的には無意味と思っていたのだけど、比較してみれば、ここまでの文章は「好奇心旺盛な人に向けた文章」であるのに違いはない。以下の本題は、これまでの「読み解き」を経た私が『Butterfly』を観ながら書いたメモを文章化したものだ。だから深い意味はない。 ここからはもう別になんでもない。私はこれを「最高」と言いたいがために、ここまでの長い文章を書いた。


「Butterfly」について: あるいは、「最高」

 [0:40まで] 既に『Butterfly』MVのイントロには言及していたけど、違うんだ、全部。そういうことだけではない。まず、Yvesの手足の長さに見惚れたい。そういうことだったんだ、私が言いたいのは。『+ +』の頃と比べると、メンバー全員のビジュアルがマイナーチェンジしている。Choerryに至っては紫だ。髪の色が。LOONA TVで“drastically~”って言ってたけど、マジでドラスティカリーだ。

 [0:54] 1分足らずで最重要シーンだ。HeeJinとJinSoul、究極的にはそれぞれの「眉」を観ていきたいちなみにOlivia Hyeは声ネタ的なところもたくさん担当している。

 [1:05] Chuuは前からボーカルとして重要な位置付けだったけど、サビ前の大事なパートを担当するのはLOONAVERSE的にも意義深い。ところで「イ スンガン」は「この瞬間」だ。似ていて助かる覚えやすい。

 [1:10] 海外ロケシーンではメンバーまったく出ないと思うんですが、どの人(人としか言えない)もカッコいい。ちょっと露悪的に描かれてる人(人)もいるけど、いい。香港のタクシーの上に乗っかる制服女子高生はめちゃめちゃポップだ。「イ デロ(i daelo)」は「Just like this.」「このまま」がより正確な表現。

 [1:28] センターはKim Lip。LOONAVERSEにおいて凄まじくハイコンテクストな『Eclipse』というデビュー曲を歌ってたし、Yvesに次ぐ文脈家だと思う。そんな言葉はない。

 [1:55] Olivia Hyeだ。ここでは「クラクラする……眼の前に広がるすべてが真っ青」ということを歌っている(はず)。映像的には夕焼けっぽいけど。

 [2:07] HaSeulだ。ここの“I better be around you.”はYeoJinが担当しているけど、髪型が変わっちゃったので「髪型でメンバーを覚える作戦」の通用しなさが分かった。俺は『Butterfly』リリース直前にギリギリなんとかなった気がしてたけど、初見のときは興奮してて何もわからんかった。何もかも。

 [2:13] ChoerryGoWonだ。ビンビンデアネバビンビンデアのあと、「世界はだんだん小さくなっていく」という旨をHeeJinが歌っているけど、「だんだん」は韓国語で「ヂョムヂョム」。これも覚えやすい。その後のJinSoulとOlivia Hyeのパートは『Egoist』を思い出させてくれる。

 [2:30] サビは“neon machi, Fly like a buttefly.”だ。「neon machi(ノン マチ)」は、ここでは「You just」に相当する。前後関係から「あなたはまるで~」となる。ここでの「イ デロ」はChoerry。ローパスフィルターみたいのかかってるけど。

 [2:50] あ~曲が良いなあ! 12octブチ上げた(実際は知らん)ような“Fly like a butterfly.”はChoerry。“nan daheul deushae(ナン タル ドゥタ)”、日本語で「すぐに届きそう」という意味の歌詞から、Kim Lipにバトン。ところでKim Lipの読みは「キムリプ」というより「キンリプ」な気がするんだけど、詳しくは分からん。ここを締めるのはChuuからJinSoul。こうしていちいち書いていくといろいろなことを覚えられる。

 [3:25] 「(If)I could be synchronized.」に聞こえるけど前半は韓国語で“gureum wiui singkeuronaijeu”、英語で「On top of the clouds, synchronize this new feeling.」。ここでの「新しい」はひらがなで書くと「せろうん」。KPOP頻出ワード。

 [3:28] リンゴ、アルビノっぽくも見える女性、香港(台湾かもしれない)の眼帯女性。かなり文脈やってるけど、ちょっとまだ分かんないですね。この香港(台湾かもしれないからね)は「1/3」のMVでも似たシーンがある。

 [3:43] 大サビ。あ~~~曲が良い! 最高!

 [4:01] HaSeulだ。サビの合間の“jeo kkeutkkaji(Taking me further away.)”もHaSeul。意味は「もっと遠くに連れていって……」。“deo meollikkarji(Even further.)”は「もっともっと遠くに……」。

 [4:10] Yvesがセンターに戻る。最後のパート割りはJinSoul→Chuu→Choerry。全部拾ってないからだと思うけど、Choerryはおいしいところを当てられてるのかもしれない。最年少。当然ながら「チェリー」とかかってるんだけど、イメージフルーツのあるyyxyには参加してないし、当人はさくらんぼが嫌いらしい。そこまで行くといい加減ちょっと分からんが。


『Butterfly』について: あるいは、「最高」(2)

 [0:00] カムバックライブの映像。この動画ではすべての歌詞がハングルだけど、歌っているメンバーの名前も出るので読み書きを覚えやすい。日本語環境ではタイプするの大変なんですが。

 [1:20] Yves→Olivia Hye→Kim Lip。韓国のバミューダトライアングル。特筆すべきところは、Olivia Hyeの“How is it true now.”の指。

 [1:28] MVでの最重要シーン。韓国のアイドルファン、めっちゃうるせー。コールもたまに聞こえてくるんだけど、基本的にはいつも「ひえええ~~~!」って言ってて意味わかんない。

 [1:33] なんか半笑いで投げキッスするOlivia Hye。ひえええ~~~!

 [1:35] ステージを横切るHaSeul。ひえええ~~~!

 [1:46] GoWonがなんか登る。深い意味はないが、覚えておいて損はない。これは絶対に面白い。

 [1:51] 腹筋だけで起き上がる。歌のパートはJinSoul→Choerry。最後の振り付けでHeeJinが十字を切っているように見えるが、私は押井守の聖書引用に脳を焼かれている可能性が高い。

 [2:24] Yvesはウィンクが多い。

 [2:30] Olivia Hyeは、なんでか分からんが常に半笑いだ。ところでOlivia HyeはLoLが好きらしく、MF ADCをやってるらしいけど、詳しい情報は錯綜しててわからん。

 [3:22] このダンスパートでは無表情なので、逆に少し面白くなっちゃう。「HeeJin(희진)」と「HyunJin(현진)」は音もそうだけど、文字も似てて読み分けるのが大変。

 [4:17] 紙吹雪がプシャッてなってびっくりする。このへんのカメラワークは番組によってまちまちなので、全体を確認するのに便利。全体を確認する必要があるときが、あるんだよ。

 [4:59] なんか天井のほうを映す。ボヤ~ってする。意味あんのか?


終わりに

 終わりです。